新会計基準への対応は大変ですか?

これまではさまざまな会計ルールが併存しており、事務処理が煩雑だったところを、新会計基準では会計処理基準を一元化しますので、今後の運用はシンプルになります。

ただし、移行にあたっては難しい部分もあります。
運用指針や様式例などの資料のボリュームが多く、これを読みこんで法人にあてはめて判断していくのに労力がかかること、旧基準での会計処理に間違いがある場合、正しい残高を確定させる必要があることなどが挙げられます。

間違った移行処理で会計ソフトを稼働させてしまい、監査のとき等に間違いを指摘されたような場合、遡って修正を行わなければなりません。その事務負担は大きいでしょう。ですので、じゅんぶん注意して移行処理を行う必要があります。

会計システムの導入や変更なども、外部に委託する社会福祉法人が多いと思われますが、委託先の絶対数が少なく、作業時期が重なると予想されるため、早めに相談することが必要でしょう。

パソコンをバージョンアップすれば会計システムは新基準対応になりますか?

パソコンをバージョンアップするだけでは、会計システムが新基準対応になることはありません。

区分や勘定科目は各法人で設定し、その設定で会計システムを動かすためにはデータコンバートが必要になります。自力で実施が難しい場合には、外部に依頼するとよいでしょう。間違った処理でシステムを稼働させてしまうと、あとから遡って修正をしなければならず、事務負担が増えてしまいますので注意が必要です。

多くの社会福祉法人では会計システムに詳しい人材が不足しているため、作業は外部に依頼することとなるでしょう。作業依頼時期が一定期間に集中する場合には、順番待ちとなって希望時期に作業を行ってもらえない可能性があります。

スムーズな移行のために準備できることを教えてください。

移行前の準備として、決算前に次のような作業を行っておくとスムーズです。

1.事業区分・拠点区分・サービス区分の設定を行う。
2.移行年度期首の貸借対照表残高を拠点区分ごとに把握する。
法人で1つの貸借対照表しかない場合、何らかの方法で拠点区分ごとに分割する必要があります。
3.旧基準科目から新基準科目への振替を行う。
4.各調整
・有価証券に係る調整
・ファイナンスリース取引の調整
・退職給付引当金の調整
・その他の引当金の調整
・4号基本金廃止の調整
・国庫補助金等特別積立金取崩しの調整
・設備借入償還補助金に係る国庫補助金等の調整

新会計基準への移行にあたって進め方のポイントを教えてください。

新会計基準への移行にあたって、進め方のポイントは次のようなものです。

(1)経営陣の理解を得る
経理担当者が独自に情報収集や検討を行ってもできることに限界があるため、新会計基準の移行の意義や必要性、想定される負荷やコストについて経営陣の理解を得ることが必要です。

(2)プロジェクトの枠組みを決める
現場における重要な問題は予算です。次の2点に分けて予算の許容範囲を検討します。
①新会計基準移行実施にかかるコスト
 ・プロジェクトに割く人員の人件費
 ・外部コンサルタントへの報酬
②システムに関連するもののコスト
 ・移行に関してシステムにかかるコスト

(3)移行プロセスに従ってスケジュール作成を行う

移行に際して行うべき作業について教えてください。

新会計基準移行プロセスにおいて行う主な活動・作業は次のようになります。

フェーズ1 調査・計画策定
・情報収集
・現状の問題点分析
・移行プロセスの整理
・現行システムの移行時分析
・移行時のコスト算出
・移行方針案作成
・スケジュール作成
・理事等への説明
・経理規程改訂
・事業計画策定
・予算の作成
・理事会承認

フェーズ2 計画実行(移行時)
・区分及び勘定科目設定
・B/S残高入力
・期首開始仕訳
・過年度調整仕訳

フェーズ3 運用(移行年度)
・新会計基準に基づいた仕訳入力
・新形式での財務諸表作成
・注記、附属明細書の作成

新会計基準における財務諸表について教えてください。

新会計基準では、社会福祉法人は、法人全体、事業区分、拠点区分およびサービス区分別に図のような様式で財務諸表を作成することとされています。

拠点区分があまり多く複雑だと、作成する財務諸表も増えて事務負担が増えることになります。こういった事務負担を考えて拠点区分を組むことも一つです。

区分の考え方について教えてください。

新会計基準では、法人全体の計算を事業区分、拠点区分、サービス区分の3つに分類します。そして、法人全体、事業区分別、拠点区分別に、資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表を作成することになります。

①事業区分
・法人全体を社会福祉事業、公益事業、収益事業に区分

②拠点区分
・事業区分を拠点(一体として運営される施設、事業所・事務所)別に区分
*ただし、特養に通所介護、短期入所生活介護が併設されている場合は、1つの拠点区分とする等、現行の指導指針における「会計区分」に準じた区分とする。

③サービス区分
・その拠点で実施する事業別(たとえば特養、通所介護、短期入所生活介護)に区分
*現行の指導指針における「セグメント」に準じた扱いとする。

・サービス区分別に作成する拠点区分資金収支内訳表、拠点区分事業活動内訳表については、その拠点で実施する事業の必要に応じていずれか一つを作成
*拠点区分事業活動内訳表は経常増減差額までの表示で可。
*上記の例では、介護老人福祉施設、障害福祉サービス事業所等では拠点区分事業活動明細書のみを作成し、保育所、措置施設は拠点区分資金収支明細書のみを作成する。

新会計基準の主な改正点はどのようなものですか。

新会計基準の主な改正点を簡単にまとめると、次のようになります。

(1)適用範囲の一元化
法人全体で資産や負債の状況を把握できるようにするため、新基準では公益事業および収益事業を含め、法人で一本の会計単位となります。

(2)計算書の簡素化
現行基準の「計算書類」が「財務諸表」に名称変更となります。
資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表、財産目録は従来通り作成します。事業活動計算書、貸借対照表を補足する書類として、原稿の多岐にわたる別表、明細表を統一し、必要最小限の「附属明細書」として新たに整理します。

(3)区分方法の変更
施設・事業所ごとの財務状況を明らかにするため、拠点区分が設けられました。また、施設・事業所内で実施する福祉サービスごとの収支を明らかにするため、サービス区分が設けられました。

(4)財務諸表等の作成
資金収支計算書、事業活動計算書および貸借対照表については、事業区分、拠点区分の単位でも作成することとなりました。

(5)その他の主な変更点
①基本金・国庫保所金等特別積立金の取扱い
基本金は、法人の設立及び施設整備等、法人が事業活動を維持するための基盤として収受した寄附金に限定されました。
国庫補助金等特別積立金は、実態に即した計算・表示となるよう一部取扱いが変更されました。

②引当金の範囲
徴収不能引当金、賞与引当金、退職給付引当金の3種類とされました。

③公益法人会計基準(平成20年4月)に採用されている会計手法の導入
財務情報の透明性を向上させるため、資産と負債に係る流動・固定の区分、資産価値の変動等をより正確に財務諸表に反映するよう、公益法人会計基準(平成20年4月)を参考に、1年基準の見直し、金融商品の時価会計、リース会計などの会計手法が導入されました。

④退職共済制度の取扱いの明確化
福祉医療機構、都道府県等が実施する制度を利用した場合の会計処理方法が明確化されました。また、法人が採用する退職給付制度を財務諸表に注記することとなりました。

⑤共同募金配分金等の取扱い
会計処理方法が明確化されました。

新会計基準の適用範囲・適用時期について教えてください。

新会計基準が適用されるのは、社会福祉法人が行うすべての事業(社会福祉事業、公益事業、収益事業)です。

事務体制が整い、実施が可能な法人においては平成24年度(予算)から移行し、平成27年度(予算)にはすべての法人において移行することとされています。

つまり、すべての社会福祉法人の移行期限が平成27年3月末(26年度決算)までということになります。

新会計基準の背景と目的は何ですか。

社会福祉法人の会計処理については、平成12年以降、「社会福祉法人会計基準」のほか、「指導指針」(略称)や「老健準則」(略称)等、さまざまな会計ルールが併存していました。そのため、事務処理が煩雑、計算処理結果が異なる等の問題が指摘されていました。

また、社会経済状況の変化を受け、社会福祉法人はさらなる効率的な法人経営が求められること、公的資金・寄附金等を受け入れていることから、経営実態をより正確に反映したかたちで国民と寄付者に説明すべく、事業の効率性に関する情報の充実や事業活動状況の透明化が求められています。

これらのことから、シンプルでわかりやすい新たな社会福祉法人会計基準が作成され、会計処理基準の一元化が図られました。

これまでは、たとえば一つの法人で介護施設と保育所を運営している場合、法人全体として一つの決算書を作成することができませんでしたが、新会計基準では法人全体の決算書を作成することができ、それによって分析や集計ができるようになります。