個人の完全支配関係における寄付金の取扱い

法人間の寄附について法人税法では、支出した法人において寄付金限度内で損金算入し(法法37(1))、これを受領した法人においては全額益金算入することになっています(法法22(2))。ですが、完全支配関係にある法人間においておこなわれる寄附はグループ全体でみると単なるグループ内資金移動です。よってそのような寄付金課税がおこなわれるのはグループ経営の実態には沿いません。そこで、完全支配関係のある内国法人間の寄附については、寄付金を支出した法人では全額不算入(法法37(2))とし、これを受領した法人において全額益金不算入(法法25(2))となります。ただし、これらの規定は個人を頂点とするグループ内法人でおこなわれる寄附については適用されません。(法人による完全支配官益に限られるため)

譲渡時の譲渡法人による通知は必要ですか

譲受法人には譲渡損益調整資産について繰延べられた譲渡損益を計上することになるような事由が生じた場合、その旨およびその生じた日をその譲渡損益調整資産の譲渡法人に通知をする義務があります。これについては、その事由が生じた事業年度終了後遅滞なく通知されなければなりません(法令122の14(18))。
譲渡損益調整資産の譲渡にかかる課税繰延の制度は、納税義務の異なる法人間において取引がおこなわれた後に繰延べられた譲渡損益の計上事由が発生したという情報が出されることによって初めて成り立つ制度です。よってこの情報が出されることを確保するために通知義務が設けられています。
また、譲渡損益の計上事由が発生した場合だけでなく、グループ法人間で譲渡損益調整資産が譲渡された時点でも、譲渡法人・譲受法人の両方に一定の内容を通知しなければなりません(法令122の14(16)(17))。
譲渡法人については譲渡後遅滞なく下記の事項を譲受法人に通知することが義務付けられています。
・譲渡した資産が「譲渡損益調整資産」に該当する旨
・減価償却による譲渡損益調整額の損益計上のときに簡便法を採用する場合にはその旨
ただし、売買目的有価証券および譲渡直前の帳簿価額が1000万円に満たない資産は譲渡損益調整資産から除外されるため通知する必要はないです。また、譲受法人については、譲受法人からの通知を受けたのちに遅滞なく以下の事項を譲受法人に通知しなくてはなりません。
 ・譲受損益調整資産が譲受法人において売買目的有価証券にあてはまる場合にその旨
 ・譲渡損益調整資産について簡便法の適用を受ける旨の通知を受けたとき、譲受法人において減価償却資産または税法上の繰延資産にあてはまる場合は、その資産に適用する耐用年数またはその資産の支出効果のおよぶ期間
 なお、譲渡法人が適格合併によって解散したときは合併法人に対して通知します。通知は譲渡法人と譲受法人の間で任意の方法でおこなって問題はないです。

グループ会社間での非適格合併について説明してください

合併法人の株式以外の資産を合併対価とするようなときには非適格合併となります。このとき資産の移転は原則、時価で譲渡されたものとして譲渡損益が計上され、所得額の計算上益金または損金額に算入されます(法法62)。しかし、グループ会社内においての非適格合併による譲渡損益調整資産の移転については、譲渡損益は繰延べの対象となります(法法61の13(1))。
また、被合併法人が非適格合併による譲渡損益調整資産の移転について譲渡損益の繰延制度の適用を受けたときは、譲渡損益調整資産にかかる譲渡利益額に該当する金額は、合併法人の譲渡損益調整資産の取得価額に算入しません(譲渡損益調整資産にかかる譲渡損失額に該当する金額は合併法人の譲渡損益調整資産の取得価額に算入します)。
よって、グループ内の非適格合併において、譲渡損益調整資産については被合併法人で譲渡損益を計上しないで、帳簿価額で移転します。

繰延処理が継続されるのはどんな場合ですか

譲渡損益調整資産にかかる譲渡損益について課税の繰延制度の適用を受けた場合、その譲渡損益調整資産にかかる適格組織再編成(適格合併・適格分割・適格現物出資・適格現物分配)によって合併法人等(合併法人・分割承継法人・被現物出資法人・被現物分配法人)にその譲渡損益調整資産を移転したときは、その合併法人等がその譲渡損益調整資産に係る譲受法人とみなされて、引き続き譲渡損益に係る課税の繰越制度が適用されます(法法61の13(6))。つまり、この場合は繰延べられた譲渡損益の計上事由には該当しません。
 ですが、このように譲受法人という地位が引き継がれる適格組織再編成は、合併法人・分割継承法人・被現物出資法人・被現物分配法人等が譲受法人との間に完全支配関係の存在するグループ会社の適格組織再編成のみに限られます。
 また、グループ会社との適格組織再編成がなされた場合や非適格組織再編成がなされた場合は、譲渡法人は譲渡損益を認識することとなります。

適格合併での譲渡損益の取扱い方法について教えてください

譲渡損益調整資産にかかる譲渡損益について、課税の繰延制度の適用を受けた法人がグループ会社との適格合併によって解散する場合があります。このときは、その適格合併にかかる合併法人をその譲渡損益について課税の繰越制度の適用を受けた法人とみなし、繰延処理を引き継ぐことになっています(法法61の13(5))。つまりは、この場合繰延べられた譲渡損益の計上事由には該当しないことになります。
なお、このように譲渡法人の地位が引き継がれる適格合併は、合併法人が譲渡法人との間に完全支配関係のあるグループ会社内の適格合併に限られています。グループ会社以外との適格合併は、解散時に繰延処理していた譲渡損益を認識することになります。
 また、譲渡損益調整資産にかかる譲渡損益について課税の繰延制度の適用を受けた法人が、非適格合併により解散した場合は、解散時に繰延処理をしていた譲渡損益を認識することとなります。

完全支配関係において議決権の有無は関係あるの?

法人税法における完全支配関係とは、「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係」または「一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」のことを指します。よって議決権の有無は完全支配関係の判定で関係はまったくありません。ただし、議決権のない種類株式、議決権が対応しない医療法人の出資持分等については関係があることもあります。判定はあくまで株式(種類株式も含む)または出資のすべてを一人の者が保持しているかどうかでおこなってください。
 また、譲渡損益の繰延べを避けたい場合には、議決権のない配当優先株式等の発行を検討することもおすすめします。ただし、ストックオプション等で役員が取得した株式や従業員持株会(法667(1)に規定する組合契約)が保有する株式の持株割合が5%未満の場合には完全支配関係に該当するケースもあります。

繰延べした譲渡損益の計上はどのようにすればいいですか

繰延べした譲渡損益額や譲渡損失額を計上する事由の発生時期は以下のようになります。
・譲受法人において譲渡損益調整資産につき再譲渡、償却、評価替え、貸倒れ、除却などが生じた場合
その事由が生じた日の属する譲受法人の事業年度終了の日を発生時期として、譲渡法人の当該発生時期の属する事業年度の所得金額を計算したうえで、繰延べした譲渡利益額または譲渡損失額を益金の額または損金の額に算入します
・完全支配関係を有しなくなった場合
繰延べされた譲渡損益の計上時点が、当該完全支配関係を有しなくなった日の前日の属する事業年度となります。
 繰延べされた譲渡損益は、戻入処理をおこなう事業年度が異なるので気を付けましょう

譲渡損益調整資産の判定基準について教えてください

譲渡損益調整資産とは、固定資産、棚卸資産に該当する土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権、繰延資産のうち、その譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額(税法上の帳簿価額)が1000万円以上のものを言います。なお、譲渡損益調整資産に該当するかどうかの判定は、原則として譲渡法人の勘定科目によりおこないます。また、有価証券のうち譲渡法人が売買目的有価証券としていたもの、譲受法人において売買目的有価証券とされるものは常に譲渡損益調整資産から除かれます。

グループ会社の範囲について教えてください。

グループ会社の範囲とは、100%株式保有による「完全支配関係」のある法人です。100%グル―プの頂点は内国法人だけでなく、外国法人や個人株主も含まれます。また、適用される法人については会社規模は関係しないため、中小企業も対象となります。
ここで言う完全支配関係とは、
 ・一の者が法人の発行株式等の全部を直接または間接に保有する関係(当事者間の完全支配の関係)
 ・一の者との間に、当事者間の完全支配のある法人相互の関係
のことです(法法2十二の七の六、法令4の2(2))。
 グループ会社の範囲は基本的に資本関係で判断され、100%株式を保有する「一の者」の中には内国法人だけでなく外国法人や個人も含まれます。よって、オーナー会社や外国会社の日本子会社であっても、どの会社がグループ会社に該当するのかということは毎期継続的に把握していかなければなりません。
 また、グループ会社の範囲として「一の者」による「完全支配関係」で、且つ「一の者」が個人のときがあります。このときの範囲にはその者およびその者と特殊の関係がある個人が含まれます。(法令4の2(2))。「特殊の関係のある個人」とは下記のように、同族会社(法法2十)に規定される同族関係者の範囲と同じものなのでその対象範囲が広くなる可能性もあるので注意が必要です。
 【特殊の関係のある個人】
 1.株主の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
 2.株主と事実上も婚姻関係にある者
 3.個人である株主の使用人
 4.株主個人から受ける金銭等により生計を維持している者
 5.1~4の者と生計を一にするこれらの親族

グループ法人税制の基本的な考え方について教えてください

グループ内法人間取引の譲渡損益調整(法法61条の13)等のようなグループ法人単体課税の規定は、原則的に平成22年10月1日以降の取引から適用されています。よって、グループ法人税制のもとでは資本関係の違いにより異なるルールがあるので、まず当社が行う取引に対してどのような課税ルールが適用されているのか認識するためにも当社を取り巻く関係者との資本関係を認識する必要があります。
 また資本関係を表している図は法人税申告の際に添付書類ともなります。(法規35四)。予想外の税務リスクを避けるためにはこの資本関係図をもとにして、グループ法人との取引が法人税法上でいかなる取扱いを受けるかを認識したうえで、取引をおこなうことが必要です。
 グループ法人税制では、次のように項目が定められています。
1.グループ内法人間の資産の譲渡取引
 一定の資産(譲渡損益調整資産)の譲渡取引をグループ内の法人間でおこなったとき、譲渡損益は譲渡法人の所得計算上、一定の要件を満たすまで繰り返し延べます(法法61の13)。 
2.グループ内法人間の寄附
 完全支配関係のある内国法人間の寄附については、寄付金を支出した法人において金額損金不算入(法法37(2))とし、これを受領した法人については全額益金不算入とします。しかし、これらの規定は法人による完全支配関係に限ってのことであるので、グループ法人間でおこなわれる寄附については個人を頂点とするため適用されません。
3.適格現物分配
 完全支配関係がある内国法人との間でおこなわれる現物分配を適格現物分配として(法法2十二の十五)組織再編税制の一環とします。また、これによって移転する資産は、時価評価の対象からは除かれ譲渡損益の計上はなされず(法法62の5(3))、源泉徴収もされません(所法24(1))。譲受法人は、資産の移転を受けたことによって発生する収益について益金不算入とします(法法62の5(4))。
4.グループ内法人からの受取配当等
 内国法人が配当金等を受け取ったとき、受取配当金等の金額から負債利子を控除した残額の一定割合が益金不算入となります(法法23(1)(4)、法法81の4)。ですが、完全子法人株式等に係る受取配当等については、負債利子を控除せずに全額が益金不算入となります。(法法23(1)(4)、法法81の4(1))。
 ここでいう完全子法人株式等とは、配当等の金額の計算期間を通して、内国法人との間に完全支配関係があったほかの内国法人の株式等のことを指しています(法法23(5)、法法81の4(5))。
5.グループ内法人の株式の発行法人への譲渡損益
 内国法人が有価証券の譲渡しをおこなったときには、原則その譲渡しに係る譲渡損益は損金又は益金に算入されます(譲渡に係る契約を交わした日が属する事業年度の所得金額の計算上)。しかし、完全支配関係のあるほかの内国法人の株式をその発行法人に対して譲渡等をおこなうときには、その株式の譲渡損益は計上されません(法法61の2(16))。
6.グループ内における中小法人の税制不適用
 法人税の軽減税率、貸倒引当金の法定繰入率、欠損金の繰戻し還付制度、特定同族会社の特別税率の不適用、交際費の損金不算入制度においての定額控除制度のような、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人にかかる制度については、資本金の額や出資金の額が5億円以上の法人、相互会社等の100%子法人については適用しません。