純資産価額の資産別評価とは何でしょうか?

評価会社が持っているそれぞれの財産を評価する場合、「相続税評価額」に基づいて評価するのが一般的です。しかし、例外的に、資産に課税時期前の3年以内に取得や新築の建物、土地が含まれている場合、「通常の取引価額」に相当する金額によって評価することになります。

(1) 資産の評価
課税時期に評価会社の資産について、財産評価基本通達で定められている方法で評価、その額を「相続税評価額」とします。

【主な資産の例および評価の概要について】
預貯金:課税時期の預金残高もしくは解約する場合の期経過利子の金額(源泉徴収を差し引いた後)の合計額から評価します。ただし、定期預金等以外の預貯金に関しては利子の額が少額な場合預金高に基づいて評価します。
営業債権:帳簿価額から回収不能な額については控除、受取手形の場合は支払期限まで6ヶ月以上ある場合、割引料の相当額を控除します。
有価証券:上場株式の場合、課税時期の最終価額、課税時期の属する月の3ヶ月前までさかのぼり、毎月の最終価額の月平均額を算出、その中で最も低い価額で評価します。取引相場にない株式の場合は同族株主等の場合「原則的評価方式」を用いて、それ以外の場合、「配当還元方式」によって評価します。
棚卸資産:財産評価基本通達において、棚卸資産は種類によって評価方法が決定されます。不良在庫以外は、実務上、帳簿価額と同額として計算するのが一般的です。
貸付金等:貸付金、未収入金、仮払金など、返済しなければならない金額で評価して、利息についても既経過利息との合計額で評価します。
建物:建物やそれと一体となった設備は、固定資産税評価額から評価します。また、賃貸による貸家の場合、その制限部分を考慮します。
その他の減価償却資産:財産評価基本通達では、再調達価額を計算方式の基本とするように定められています。しかし、税法限度額によって減価償却を実施しているのであれば、実務上は帳簿価格と同額にすることが一般的です。
土地等:財産評価基本通達において、土地(宅地、田、畑、原野、牧場、山林、池沼、鉱泉地、雑種地)を地目別に分けて評価すべきとされています。例えば、市街地の宅地は路線化方式、それ以外の宅地は倍率方式で評価すべきです。
ゴルフ会員権:株式形態のものか、取引相場があるかどうかなど、評価方式が決定されています。
帳簿価額はなくても評価対象となる資産:例えば未収の生命保険金が挙げられます。会社の代表者が被保険者となり、受取人が会社という生命保険契約を結んでいる場合、代表者が死亡した場合、保険金収入が見込まれるのであれば、死亡保険金相当額によって評価します。
評価対象にならない資産:例えば、前払い費用、創立日、新株発行費等の繰延資産や繰延税金資産は評価に含めることはありません。

【例外的規定の代表例(過度な節税対策の防止)】
課税時期以前3年以内に取得した土地等または建物等:該当する資産の評価方法は、課税時期における「通常の取引価額」です。
評価会社が有する取引相場のない株式:評価会社が所有する取引相場にない株式は純資産額で評価するのですが、含み益に対する法人税等相当額を控除できません。

(2)負債の評価
基本的に、負債額は対外的に金額が確定しているものです。そのため、負債に対して評価する必要はありません。したがって、負債の大半は相続税評価額と帳簿価額が同額になるのです。

[留意点]
引当金等:貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、納税引当金及びその他引当金、準備資金、繰延税金負債は、負債に含めないこととします。ただし、経過措置適用後、退職給付引当金は負債に含めます。
未納の法人税等:直前期末の決算を基準に評価する場合、未納の法人税等は負債に含めます。
未納の固定資産税及び都市計画税:課税時期以前の賦課期日(1月1日)があった固定資産税、都市計画税の中で未払いのものは負債として計算します。
剰余金の配当等:直前期末から株主総会までの間で課税時期がある場合、未払配当金は負債として計上しません。ただし、株主総会後に課税時期がある時は負債として計上します。
未払の退職手当金等:被相続人が死亡した時、会社が支給すると確定していた退職手当金や功労金、その他にもこれに準ずる給与については負債として原則的に含まれます。
被相続人に係る社葬費用:評価会社が被相続人の社葬費用を負担している時は、純資産価額の計算において社葬も負債に計上して良いという法律になっています。ただし、遺族が負担すべきものは除きます。
その他未納租税公課、未払利息等の簿外負債:借入金の未払利息や未払の租税公課など、決算書に計上されない債務も負債として計上します。